研究概要 |
1.7色(白,黄,だいだい,茶,畔,透明,半透明)に分類された珪砂の成分を分析した。すなわち,一定量の試料を硝酸とフッ酸で溶解の後,Alはオキシン法,Si,Fe,Ca,Mg,Na,Kは原子吸光法にて定量した。その結果,前年度とほぼ同様の値が得られた。 2.珪砂表面の化学的性質が濁質捕捉に及ぼす効果を確認した。すなわち,表面を金コ-ティング(イオン・スパッタリング装置,200オングストロ-ムで4回)した珪砂としない珪砂の2組を用意し,これを小型のろ過筒(ろ材層の厚さ60mm,空隙率44.3%)に充填の後,最初に原水pH変動下(カオリン20mg/l,PAC 10mg/l,ろ速240m/d,4時間)で,その後中性pH域で凝集剤PACの注入率変動下でろ過を行った。その結果,前者ではAlの溶解領域(酸性とアルカリ性域)では差はなかったが,不溶域のpH6と6.5でおよび後者の全ての注入率で,金コ-ティングろ材の濁質捕捉率が1.5〜3%高くなった。これらのことからろ材表面の化学的効果は小さいことが明らかである。 3.ろ過方向(上向流と下向流)の違いによるフロックの初期付着部位について検討した。小型のろ過筒内に1ケの珪砂を固定してろ過した後,電顕試料室に入れ,表面の物理的性状とフロックの付着状況を詳細に観察した。その結果,前年度の報告通り,フロックの捕捉はろ材表面の凹凸と深く関わることが明らかになった。また下向流ろ過の方がフロック量が多くなるが,ろ過方向に伴う抑留状況に差異は認められなかった。 4.今後,走査電顕にエネルギ-分散型X線分析装置を組み込み,ろ材表面の詳細な金属成分の分布と関連させてフロックの初期付着部位を検討することが必要と考える。
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