京都市内の山鉾町の中から調査対象として8ケ町を選び出した。その8ヶ町で音環境に関する質問紙調査と聞きとり調査を実施した。また、携帯用テ-プレコ-ダを用いて地区内の音を録音し、それを再生して地区内の音の音源を識別するとともに、その発生回数、エネルギ-寄与率を算出した。その結果、日常的な山鉾町の音環境は、自動車の走行音で支配されており、かつその騒音レベルは幹線道路、準幹線道路、路地といった道の種類により大きく異なる。道路の音が住居内の居住空間に到達するまでに減衰する騒音レベルは20〜40dBである。質問紙調査の結果から、居住者の騒音に対する不快感は、その住居の形態と高い相関があることが明らかとなった。これは、京都市内の大きな家屋や居住空間が道路から離れることによる。また、高層集合住宅の居住者は、聞こえる音の音源が木造低層住宅の居住者と異なることによる。道路交通騒音がうるさいと思う道路と交通量が多いと思う道路は一般に異なること居住者が音を聞いている範囲(音地平)が約200mの範囲であることも明らかとなった。音地平は、祇園祭の囃子に対する住民の意識にも反映され、さらに二階囃子の聞こえる範囲ともほぼ一致するものである。山鉾町の音環境は、日常と非日常によって大きく分節化され、画一的な科学的調査によっては把握することができないことが明らかとなった。ただし、非日常とは祇園祭の期間中のことである。
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