バイリニア型の履歴特性をもつ1自由度系に実際の地震動加速度に似たスペクトル特性をもつ入力が作用した場合の非線形ランダム応答を考察した。変位応答を履歴中心の移動量とその中心まわりの変形から成るものとし、前者を正負の累積塑性変形の差に基づくランダムウォ-ク、後者を等価な固有振動数をもつ振動成分とみなしている。変位と速度の分散、最大変形と累積塑性変形の期待値と分散の時間的変化に焦点があてられ、近似解が理論的に導かれている。最大変形または累積塑性変形である規定された値を越えることを破壊とみなし、その確率を以上の結果を使って評価した。塑性率と累積塑性率の間の関係や降伏加速度が減少するにしたがって塑性率や累積塑性率がどのように増加するかを検討した。 速度応答の分散が他の重要な応答の期待値と分散に直接的に関与することが判明したが、その表現式はシミュレ-ションによる数値実験値と必ずしもよくは一致しなかった。これは速度をある等価な固有振動数をもつ正弦波とみなすという近似が相当粗いせいである。数値実験値に合うよう表現式の係数を修正すれば、他の応答量も数値実験値とよく一致するようになることが確認された。すでに求められているスリップ型の履歴特性をもつ系の応答と本研究の結果を比較し、履歴特性が変わると耐震安全性がどのように変化するかを考察した。得られた近似解は非常に単純な形をしているので、どのパラメ-タがどのように応答量に関与するかを簡単に知ることができて有用である。
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