研究概要 |
鉄筋コンクリ-ト壁による通常の鉄骨鉄筋コンクリ-ト構造耐震壁の基本実験のあとをうけて,本年度は,鉄骨鉄筋コンクリ-ト構造にしか適用できない,鋼帯ブレ-ス耐震壁を組込んだ鉄骨鉄筋コンクリ-ト単位ラ-メンの実験を行い,その結果,鋼帯ブレ-ス耐震壁では,鋼帯の座屈現象のため,鉄筋コンクリ-ト耐震壁と比較し,量的には,あまり変わらぬ抵抗性状を示すことがわかった。ただ,最大抵抗変位が,鋼帯ブレ-スの板の向きにより異なり,鋼帯面が鉄筋コンクリ-ト壁面と並行に入っているものについては,鋼帯の座屈が壁面と直角に生ずるため,きわめて座屈し易く,その抵抗性状は鉄筋コンクリ-ト耐震壁と殆ど変わらず0.005近傍であるのに対し,鋼帯面が鉄筋コンクリ-ト壁面と直角に入っているものは,鋼板の座屈が鉄筋コンクリ-ト壁によって抑止される結果,最大抵抗変位が0.007〜0.010と倍増し,周辺ラ-メンの降伏変位に近づくことは注目に値する。実用技術への利用にも有効な方法の開発が期待されます。次に,本年度から新に鋼板耐震壁及び鋼板入り鉄筋コンクリ-ト耐震壁についても実験を開始したところ,鋼板の座屈後,斜張力場の形成によりきわめて大きい靭性が得られることがわかった。鋼板入り鉄筋コンクリ-ト耐震壁にあっては,通常の鉄筋コンクリ-ト耐震壁と同様,最大抵抗は0.005付近の層間変位角で到達されるが,以後の崩壊は,内挿鋼板の効果で,さほど激しくなく,その抵抗は,0.020付近で,内挿鋼板の斜張力場に移り,そのまま抵抗は持続されて,大きな靭性が発揮される。 以上のごとく,鋼板入り耐震壁は,鉄骨鉄筋コンクリ-ト架構の耐震制御要素として,きわめて有効なものであることが判明した。この有効性の量的把握が,次年度の貴重な課題であり,既に実験準備に入り,鋼板板厚をパラメ-タ-として抵抗と靭性への有効性の量的解明を目指している。
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