研究概要 |
我が国中高層ビルの殆どを占める鉄骨鉄筋コンクリ-ト構造の耐震壁は,その殆どが鉄筋コンクリ-ト壁で造られている。この鉄骨鉄筋コンクリ-ト構造の耐震壁に,有来の鉄筋コンクリ-ト壁に加えて,鋼帯プレ-スを入れた場合を平成2年度に研究を行った。最終年度の本平成3年度には,鉄筋コンクリ-ト壁に鋼板耐震壁を挿入した場合し,鋼板耐震壁のみの場合という,言わば究極の鉄骨鉄筋コンクリ-ト耐震壁についてその基礎的な抵抗性状の解明を行った。その結果を下記に要約する。 鋼板耐震壁は,斜圧縮方向に早期に座屈波を発生,斜引張方向に斜張力場を形成し,鋼板耐震壁は,専ら,この斜張力場の抵抗によって効果を発揮する。その結果,層間変位角約0.025で最大抵抗を示し,周辺鉄骨鉄筋コンクリ-ト・ラ-メンが抵抗喪失を始める0.060程度の変位に対しても最大抵抗にほぼ近い,十分な抵抗を持続し,層間変位0.100に達しても猶,抵抗は失われない。即ち,きわめて大きな靭性を発揮する事が示された。この場合,きわめて強力な斜張力場が形成される結果周辺鉄骨鉄筋コンクリ-トーラ-メン,特に,その梁材は,内側に引き込まれる。この引張に対する鉄骨鉄筋コンクリ-ト梁の補剛を必要とする。 次に,鋼板耐震壁を通常の鉄筋コンクリ-ト耐震壁でサンドイッチし複覆した場合には,複覆鉄筋コンクリ-ト耐震壁が斜圧縮応力場を形成する結果,きわめて大きな初期剛性と耐力上昇をもたらすが,その最大耐力は,通常の鉄筋コンクリ-ト耐震壁と全く同じように層間変位0.005で発揮され,以後,抵抗は低下して,その効果は0.020付近で喪衣され,以後は,専ら,中心部にサンドイッチされた鋼板に形成された斜張力場によって持続される事が解明された。以上,本研究によって,鉄骨鉄筋コンクリ-ト耐震壁は,鋼板耐壁の挿入によって,きわめて大きな靭性が得られる事が示された。
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