本研究の目的は、鋼構造建築物のなかでも最も重要な構造要素の一つである柱材を例にとって、構造研究者や構造実務家の間で共有されるべき貴重な構造実験情報に対して、それを効率良く保存しまた必要な情報を簡潔・適切に取り出すことを可能にする知識ベ-スのプロトタイプを試作することである。本年度においては、構造実験情報として保存すべき情報がなにであるかを同定し、またその情報が知識ベ-スとして保存されるためにはどのように分類されるべきであるかを明らかにすることを目的として、鉄骨柱材の構造特性を左右する因子の抽出、構造特性を特徴づける指標の抽出、各因子・指標間の相関度と重要度の分析を中心に研究を進めた。主な成果を以下に示す。 1.過去20年間に公表された、鉄骨柱材に対する構造実験に関する論文調査を行い、実験の基本変数と、実験結果として得られている鉄骨柱材の特性を蓄積したデ-タベ-スを構築した。 2.このデ-タベ-スを用いて一連の相関分析を実施し、柱材の構造特性を左右する因子と構造特性を特徴づける指標を同定した。 3.また不足資料を補うために構造実験も実施し、この結果に基づいて、構造特性を左右する因子の相関度と重要度を定量化した。 4.鉄骨柱材の挙動を求めるための数値解析プログラムも整備し、一連の数値解析を通じて、柱材の挙動を支配する因子の特に柱材の強度特性に及ぼす感度を分析した。 5.2〜4の分析結果に基づいて、柱材のための実験情報を知識ベ-スに組み込むための手順を開発した。
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