研究概要 |
鉄骨建築に用いられる鋼材の品質はJISに決められているが,降伏応力度は最低の保証値しか示されていない.そのため,降伏応力度が規格値より大きくて強ければ,構造物は安全であると一般に考えられている.しかし,鉄骨構造の終局状態における耐力および変形能力は鋼材の降伏点よりむしろ,降伏比(降伏応力度/引張強さ)に大きく依存することが指摘され,大きな降伏比を持つ鋼材で製作された構造物の終局的な安全性は検討の余地がある. したがって,鋼材の降伏比の違いが鉄骨骨組の変形能力にどの様に影響を与えるかを調べ,構造物の終局安全性の観点から鋼材の降伏比がどの程度の値まで許容できるかを明らかにする必要がある.そこで,この研究では,大きな降伏比を持つ場合,特に問題となる,はり端の溶接熱影響部でのはり部材の破断に注目して以上の検討をする. 実験は門形ラ-メン試験体(高さ120cm,スパン150cm,柱断面150*150*6*9,はり断面150*100*6*9)に繰返し水平力を載荷することにより行った.実験変数は鋼材の降伏比で,0.63と0.85を選び,2体の実験を行った.その結果、降伏比が0.85の試験体は骨組の層間変形角が6%まで安定した履歴性状を示し、降伏比が0.85までの鋼材を用いた構造物では耐力,変形能力の点で問題となることはないことがわかった.
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