研究概要 |
本研究はコンクリ-トの練混ぜから,打設・養生までの各工程における外気温の高低がコンクリ-トの諸性状に及ぼす影響を定量的に把握し,暑中環境下で製造・施工されるコンクリ-トの物性向上を目的として行ったものである. 本研究では,まず,世界各地域の気温・湿度の日変化及び年変化が実験室内で再現できるシミュレ-ションシステムの開発を行い,本システムにより,実際の種々の暑中環境を精度よく再現できることを明らかにした. 打設前のコンクリ-トの物性に関しては,JASS 5のコンクリ-ト練上り温度推定式に,練り混ぜ・運搬時間及びその時の外気温を考慮したコンクリ-トの打設温度推定式を提案し,外気温が一定の場合,外気温の変動する場合のいずれについても,コンクリ-ト温度推定値が実験値とよく一致することを示した. 打設後のコンクリ-トの物性に関しては,研究を進めていく段階で,暑中コンクリ-トは強度発現性状についてはほとんど問題がなく,コンクリ-ト表層部の劣化,特に初期ひびわれ発生が深刻な問題であることがわかってきた.そこで本研究では,暑中コンクリ-トの表面ひび割れを検討するため,打設された試験体内部の温度性状について的を絞って検討を行った.暑中環境下で打設される床スラブや壁部材等,薄板部材の初期ひびわれ発生に対して,(1)外気温の高低,(2)練り上がり温度の高低,(3)外気温の変動,(4)打設時期及び(5)外気湿度の高低の影響について,試験体内部の温度性状の観点から実験,解析的に検討を行った. この2年間の研究により,暑中コンクリ-トに関する研究システムは実験・解析上ともにほぼ完成している.今後,日射の影響,風速の影響を明確にし,最も重要な最適養生方法について検討を続ける予定である.
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