RC曲げ破壊部材は曲げ降伏後の繰り返し載荷を受けることにより単調載荷時と比較し著しく変形能力を低下させることが知られている。しかし、この繰り返し載荷時の破壊メカニズムは靭性設計型の耐震設計法を確立する上で重要であるにもかかわらず、未だほとんど解明されていないのが現状である。本研究はRC曲げ破壊部材及びアラミド繊維棒を主筋とする曲げ破壊部材の繰り返し疲労実験を行い、破壊の集中する部材脚部の挙動に注目し、繰り返し載荷時の破壊メカニズムの解明及びその発生条件の定量的把渥を試みたものである。 繰り返し疲労実験の結界から、RC曲げ破壊部材が各種の繰り返し載荷を受け破壊に至る過程を考察し、次のような知見を得た。(1)部材脚部の軸方向歪は繰り返しとともに増加するが、やがて伸びの限界をむかえ、減少に転じる。(2)この軸方向歪が減少に転じる点は部材脚部の横方向歪が急増する点とほぼ一致しており、その時の横方向歪は全試験体を通して約4〜5%の値である。(3)これらの軸方向歪の減少に転じる点及び横方向歪が急激に増加する点は、部材の繰り返し破壊点とほぼ一致している。以上の考察から、本研究では、曲げ破壊部材の繰り返し載荷時の損傷とは、入力されるエネルギ-が部材脚部の歪(軸方向歪、横方向歪)という形で吸収蓄積させることであるとする仮説を立て、この損傷が原因で生じる破壊を「繰り返し歪蓄積破壊」と呼び、繰り返し載荷時の新しい破壊モ-ドの提案を行った。現在、RC部材の破壊モ-ドとして慣用されているものは全て一方向単調載荷時に起こり得るメカニズムを念頭におき提案されたものである。これに対し、ここで提案された「繰り返し歪蓄積破壊」は繰り返し載荷時特有の歪蓄積のメカニズムにより発生するものであり、慣用されている他の破壊モ-ドとは本質的に異なるものである。
|