多槽連結型蓄熱槽について、搬送動力を軽減しつつ有効容積率の向上を計るために各槽の連通口をどのように設計すべきであるのかを検討するために、連通口の大きさと位置の槽内混合特性に与える影響と連通口内部に発生する流速分布形成過程の把握のために実験と数値計算を中心とした以下の研究を行った。 1.入力側連通口と出力側連通口の相対的な位置関係の槽内混合特性に対する影響の検討のために、連通口を全て下部に設けた場合、連通口を交互に下部と上部に設けた場合、上部の連通口を中間の高さに設けた場合の3種類の実験を行った。その結果、蓄熱温度差が大きく、流量も少ない場合には、連通口の位置によって槽内の混合特性は大きく影響されることが明らかとなった。特に、連通口が上下交互の場合には、入力された高温水が上部の連通口にバイパスする現象が確認され、流量が少ない場合には大幅に有効容積が減少する可能性があることが明らかとなった。 2.連通口内部の温度成層のために発生する連通口での流速分布については、建築設備設計で利用されている換気理論を援用したモデルを作成し、実験結果との比較でも良い一致を示した。下部高温水入力の槽内混合モデルについては、入力流量が連通口から水面まで線形配分されるモデルと連通口から上部に浮力によるプリュ-ムが形成されるモデルの2種類を検討し、物理的にはプリュ-ムモデルが優れていることを明らかにした。連通口モデルと槽内混合モデルを合わせた蓄熱槽全体としては、おおよそ実験結果と一致するものの、連通口での低温水の逆流については、まだ十分にモデル化されておらず、今後の検討が必要である。
|