本年度は、研究課題に関連する基礎的な資料を収集する文献資料調査、オ-プンスペ-スをもつ小学校の見学、教員等へのインタヴュ-、利用実態の観察調査、ならびに最近5か年間に新設された全国の小学校およそ250校らのアンケ-ト調査に対する回答の分析を行い、下記の視点から本年度の研究成果をまとめた。 1.学校図書館相互のネットワ-クと地域の公共図書館との関係 米国の学校図書館ネットワ-クの中枢機関であるメディアリソ-スセンタ-について、その成立の経過、現状の活動内容に関する資料の分析、わが国の現状の考察をもとに、わが国においてメディアリソ-スセンタを構築していくプロセスの構想をまとめ、可能性を検証した。 2.図書への動機づけ活動等、図書館の活動について 小学校における読書の動機づけ活動では先進的な7例を取り上げ、その活動内容と実態、教員・児童の評価と問題点を詳細に検討した。また、図書(館)委員の活動実態についても同様な事例調査に基づく分析を行った。両者から、当該活動を行うための制度的・環境的条件整備の方針を得た。 3.オ-プンスペ-スに図書を分散配置する分散方式と一室に集中する集中方式の比較検討 読書教育の視点、建築計画学的観点から分散方式と集中方式の比較検討を行った。結果としては、教員の読書指導や適切な選書、定期的なロ-テ-ションのない現状の分散方式は、単なる安易な図書の分散に過ぎず、かえって児童の読書の幅を限定する弊害を生みだしている点が明らかになった。 次年度以降は、具体例での検証を中心に、より建築計画学的視点を拡げていくことにしている。また、論文としての報告は次年度以降に行うことにしている。
|