本研究課題の目的は、入院患者・入所者の属性別に離床率・離室率等を指標に生活場所を比較し、室内の行動を分析し、生活内容の実態と要求を把握する。さらに、生活行動、特に自主的行為の種類・時間が施設空間の充実度によりどう違うかを分析把握し、空間環境が自主的行動の充実に重要であることを確認する。これらをふまえて、施設の性格別に自主的生活行為のために用意すべき空間の種類と計画上の要点をまとめる事である。本年度は前段での調査・分析記結果をさらに発展させるために、診療課目別の分析を目的として、津国立病院の全面的な協力を得て、5病棟で朝の検温時間から夜の消灯時間迄、10分間隔で調査対象患者の居場所・姿勢・行為を調査した。調査結果は現在なお詳細な分析を継続中であるが、主要な結果を述べる。診療科別では大きな科では、整形外科の患者の生活行動が他の科の患者に比べて非常に違うということである。室外での生活行動・室内での趣味的行動が非常に多い。また小さい科では、産婦人科・小児科・眼科の患者が特異な行動パタ-ンを示すことが分かった。産婦人科・小児科については既に予測されたところであるが、眼科の患者は多くの場合目が見えないために行動の自由を大変制限されているこが各種のデ-タにも明確にでてきた。患者数がさほど多くないために、無視されがちであるが重要な問題である。また全科をとおして患者の生活パタ-ンを整理すると、臥姿療養型・室内趣味型・室外脱出型に大きく分けられることが分かった。今後はこれらの分析結果と空間との関係をさらに分析していくつもりである。
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