住環境を長期にわたって維持・増進するために、「建築協定」を締結した分譲住宅地が多くなっている。また、昭和51年に発足した“一人協定制度"による建築協定地区も更新時期をむかえた地区が多くなっており、建築協定を定着させるための新たな政策展開が必要となってきている。本研究の目的は、住環境が成熟化過程にある建築協定団地での協定運用の実態と居住者意識の形成動向を把握し、住環境の保全・誘導に対する合意形成手法を検討するものである。そのために、本年度は次のような点について研究を進めた。1.住環境が成熟化過程にある建築協定団地と「新住宅市街地開発法」が期限切れとなったニュ-タウン地区を調査対象として住環境の実態調査を行った。そして、独立住宅地の用途変更や宅地分割等の実態を明らかにし、建築協定の存在意義がますます高まっている状況を把握した。2.全国の自治体を対象として、1989年4月現在で建築協定が有効期限に達した協定地区(426地区)における協定の更新状況を把握した。その結果、52.9%の地区が建築協定を更新しており、一人協定地区においても更新率が高く、協定の有用性が高く評価されていることがわかった。また、更新を機会に地区の実情に応じて協定内容や協定区域を変更するなどの様々な対応の実態が把握された。3.建築協定を更新した地区の居住者代表を対象としてアンケ-ト調査を行い、建築協定に対する合意形成活動と環境保全に対する取組実態を把握した。そして、協定の締結背景や地区条件などにより合意形成活動の内容には特徴をもつことや、住民合意を確保する手法として、アンケ-ト調査の実施や住民のもつ専門知識、自治会組織の活用は有効であることが把握された。なお初年度では、建築協定の更新状況や合意形成活動の実態等を、地区条件と対応させて詳細に分析することができなかった。次年度では、これらの点について解明する計画である。
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