本研究の目的は、良好な住環境を保全しながらも、ニュ-タウンをアメニティのある機能複合都市に成長させるための制御方策について考究することである。 報告書は4章から成る。1章では、ニュ-タウンにおける住環境形成過程の実態を、高蔵寺・洛西・千里ニュ-タウンにおいて調査した結果を分析した。2章では、ニュ-タウンとの比較のために、京都市の西陣地区を調査対象として、既成市街地における住環境の変容を分析した。西陣地区の住環境の変容は、マンション建設によって引き起こされており、20年にマンションが4倍に増えている。そのために伝統的な街並み景観が乱れている実態が出た。3章では、高蔵寺ニュ-タウンの店舗等の開業者の住環境保全に対する意識調査の結果を分析した。店舗等の自然発生は、計画的な生活利便施設のサ-ビスを補う機能があるが、経営状態は必ずしもよいとはいえない。また、趣味的な開業もあって、副業的店舗も多い。開業者が住環境保全に対して配慮した内容は、騒音や自動車公害であって、景観については、看板に配慮があった。4章は建築協定地区における合意形成活動の実態を述べた。 店舗等の開業者が住環境保全のために行った配慮は、景観保全よりもむしろ騒音の防止や自動車公害の防止にある。そして、店舗等をコミュニティのひとつの核にして住民の交流を深めようとする努力が店舗側にある。実態として、経営状態の不安定さのために、廃業がして朽ち果てた店舗等が少なからずある。これが、住環境にマイナスとして作用している。建築協定では、この問題についての対策がない。住環境に対する廃業店舗の悪影響はおおきいので、この問題に対する制御方策が今後必要になってくるだろう。
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