平成2年度の実施計画にそって、主として次の6項目について検討した。 1.前年度より実施してきた(1)各種単位空間内における生活行為の洗い出し、(2)単位空間と主たる行為のマトリックスの作成、(3)各種行為の一連の動きの写真計測、(4)目的行為を完遂するために必要な空間的「ゆとり」の系譜と意味付けなどについて、さらに実験および調査を進めた。 2.前年度対象とした被験者は、主に健常成人男女であったが本年度は、平均的体位の健常成人からその対象を広げ、体位の大小の者についても計測した。 3.人体寸法の代表的な数値を目安として、ヒトとヒト、ヒトとモノの関係が略算的に求められるかを考察した。特に身体周囲のアキ寸法は、高さ方向では身長、左右方向では最大体幅、前後方向では最大前後厚との関係が深いことが分った。 4.身体周囲に必要なアキ寸法は、前後、左右、上下という方向性の中で、ある程度数値的に標準化が可能であることが予期された。しかし、目的行為によっては、被験者間の動作のバラツキがみられ、今後は各単位空間ごとに目的行為の共通部分を抽出して、類型化を進めてゆく所存である。 5.国内外の関連文献の収集と整理を行った。 6.動作を連続的に測定する場合、その測定には困難な条件が多い。そこで、これまでは現有のビデオポジションアナライザ-装置や特殊な写真計測法を応用して立体的な測定を行ってきた。特に、前年度の科学研究費補助金の設備備品費で導入した「移動位置検出システム装置」を活用して補足実験を行った。その結果、本装置は、歩行などの連続動作の解析にとってはかなり有用であることが分った。特に、今回実施した2つの実験、(1)超音波行動記録装置によりアキ寸法の計測、(2)歩行足跡からの身体周囲のアキ寸法の計測において、前者の実験結果から、これまで数値でしかとらえることができなかったアキ寸法を視覚的にとらえることが可能になった。
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