標記の研究において、本年度は、赤坂離宮(旧東宮御所・現迎賓館・明治41年完成)の内装のうち、床・壁・天井について、各材料とその加工・施工技法について調査研究を行った。宮内庁書陵部臓「東宮御所造営工事録」(明治31年〜41年)に収録されている工事仕様書および施工図等の基礎資料を主に調査・分析する実証的方法によっており、主要資料については昨年度と同様に、できる限りマイクロ撮影複写を行った。 床・壁・天井材としては、床寄木張り、床織緞敷き、床リノリウム敷き、床・壁大理石張り、壁布地張り、壁・天井漆喰塗り、壁・天井塗装等について、それぞれの材料(産地・品質・規格)・加工技法・仕上げ技法等を分析・検討した。これらの内装について共通していることがらは、各材料とも品質を重視し、高級品を厳選もしくは特注していること、加工がていねいに行われていること、施工も工程数を多くし念入りに行われていることなどで、当時の一般建築と比べてはるかに入念・緻密な施工が施されたことが判明する。同一仕上げについては、各室ともほぼ共通の仕様によっている。なお、材料の産地や製造元については、仕様書には記載されていないものが多く、他資料の援用が必要となる。 昨年度は見出せなかった施工業者に関する資料として、工事前半分(明治32年〜36年)の工事摘要薄が新たに見付かった。これには、各工事別の施工業者名が記されているので、今後の追跡調査の手がかりを得ることができた。
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