この研究は、ネパ-ル建築において特に破壊の進む仏教僧院建築を保存するため、その指標を求めて、ヒンドゥ-教僧院、王宮建築、民家など中庭形式の建築の形態的特徴を写真・図面等の分析によって求め、その類型化を試み、あわせて文献的研究を行なうものである。今年度の進行状況・実績は、以下のとおりである。 1.資料の収集・抽出 現在まで現地を中心に収集した写真・実測図面に、現在の状況写真を加えた。また、著書『BIBLIOTHECA HIMALAYICA』、考古局発行の雑誌「ANCIENT NEPAL」から掲載された写真・図面を抽出して、加え資料とした。このほか、ネパ-ルから『VOYAGE AU NEPAL』・『TIERD TEMPLES OF NEPAL』を取寄せ、資料を抽出した。 2.整理 上記資料を建築毎に編年し、デ-タファイルの作成により整理を進めた。 3.復原的考察 上記資料をもとに、渡辺は宗教僧院を、黒津は王宮建築を担当して考察に入った。その結果の一部をすでに、後掲のように建築学会大会および論文報告集に発表した。すなわち、チョク建築を構造上復原して考察すると、その典型は、マッラ朝のム-ル・チョクとスンダラ・チョクにみられ、シャハ朝になると増拡され、発展した形式が出現することなどを明らかにした。
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