研究概要 |
1.石造文化財関連資料の収集ー:古墳石室〔さきたま古墳群,八幡山古墳(埼玉)〕,城の石垣〔盛岡城(岩手),仙台城(宮城),鉢形城(埼玉),グスク跡(沖縄)〕,磨崖仏〔大谷(栃木),熊野・臼杵(大分)〕,岩壁彫刻〔手宮洞窟,フゴッペ洞窟(北海道)〕の石造文化財について現地調査を行い,構造・材質を主体とした実測図,資料等を収集し,この解析を行った。 2.岸壁遺構の経年変化ー:北海道小樽市にある国指定史跡手宮洞窟奥壁に1800年前頃に施された陰刻(古代文字)がある。この陰刻のある岩壁に亀裂が生じ,剥離・崩壊が進行しているため,陰刻面に変位計を設置し,亀裂進行の経年的な変化量を測定した。'90年3月8日より測定を開始し,'91年3月1日現在までに約1mmの変動を計測している。新しい知見として,亀裂幅の増大と減少は外気温度の変化の周期に伴なって挙動しており,春から夏にかけて増大する傾向を示し,秋から冬にかけて減少することが判明した。今後若干測定期間を延長し,デ-タの重ね合わせを行うことにより,1年間における変動の周期が確定でき,残留した変位量も明確になると考える。 3.石積遺構の経年変化と解析ー:岩手県盛岡市の盛岡城石垣で行った経年変化の測定デ-タを解析し,石垣の崩壊や孕みだしの原因を究明した。石垣の挙動は季節の変動に伴い,膨張・収縮の一定周期をもって呼吸し,石垣面全体としては,前後・左右・上下に波を打つように挙動する。緩慢ながら毎年0.5〜1.0mmの残留変位が蓄積されていることが判明し,温度変化と降水による作用が相乗的に働くことが崩壊の大きな原因であることが判った。又,石垣上下地盤の固有振動数の違いから,上部での増幅率が5〜7.5倍となり,上部では下部より震度階が1ランク上がり,地震時の振れが大きなくることも判明した。
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