高温岩盤帯中の鉱石の採取を可能にするためには、開発直後における岩盤から気流への熱伝達をできるだけ小さくすることが望ましい。そこでまずパソコンによる岩盤内気流解析プログラムを開発し、つぎにこれを用いて断熱材吹付けの効果について予測解析を行った。また、実際の高温岩盤内坑道の一区間に断熱材吹付けを行い、その効果について観測を行った。その結果つぎのようなことがわかった。 一般に坑道が高温岩盤内にあっても、通気開始後の時間が経過するにつれて、坑道まわりの岩盤は徐々に冷えて壁面近傍の温度勾配は減少する。すなわち、時間の経過とともに岩盤から気流に伝達される熱量は徐々に減少し、気流温度も低下する。一方、断熱材を坑道壁面に吹付けると、坑道まわりの岩盤が気流によってあまり冷やされないことになるが、壁面温度はライニングしない場合より低くなる。また断熱材内の温度勾配は大きいが、断熱材の熱伝導率は小さいので、岩盤から気流に伝達される熱量は小さく、通気開始後それほど時間が経過しないうちから気流温度は低くなる。よって、断熱材吹付けは開削後間もない坑道内の気流温度制御に有効な手段であると考えられる。 今回は、予測解析についても現場実験についても、吹付け厚さを3cmとしたが、今後の解析においては、断熱材の厚さと断熱効果との関係を調べて適切な吹付け厚さについて検討したい。また今後の現場実験においては、まず吹付け機を改良し、つぎに改良した吹付け機を用いて豊羽鉱山信濃〓の入気坑道において、予測された最適の厚さの断熱材吹付けを行い、その効果について確認したい。
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