研究概要 |
高温岩盤内の鉱石を従来の採鉱法によって採取するためには,開発直後の岩盤から気流への熱伝達をできるだけ小さくすることが望ましい。そこで開発直後の岩盤にライニングを施して熱伝達制御を行うものとし,その効果について検討した。すなわち,まずパソコンによる岩盤内気流解析プログラムを開発し,これを用いて断熱材吹付けの効果について予測解析を行った。つぎに,実際の高温岩盤内坑道の一区間に断熱材吹付けを行い,その効果を観測した。その結果つぎのようなことがわかった。 1)一般に坑道が高温岩盤内にあっても,通気開始後の時間が経過するにつれて,坑道まわりの岩盤は徐々に冷えて壁面近傍の温度勾配は減少する。すなわち,時間の経過とともに岩盤から気流に伝達される熱量は徐々に減少し,気流温度も低下する。2)断熱材を坑道壁面に吹付けると,坑道まわりの岩盤が気温によってあまり冷やされないことになるが,壁面温度はライニングしない場合より低くなる。3)断熱材内の温度勾配は大きいが,断熱材の熱伝導率は小さいので,岩盤から気流に伝達される熱量は小さく,通気開始直後も気流温度は低い。4)よって,断熱材吹付けは開削後間もない坑道内の気流温度制御に有効な手段であると考えられる。 また,現場実験は,吹付け厚さを3cmとした場合についてのみ行われたが,予測解析においては,ライニングの厚さを変えて数値計算を行い,断熱材の厚さと断熱効果との関係を調べて適切な吹付け厚さについて検討した。なお,豊羽鉱山は,上記の成果を考慮して,最近発見された超高温岩盤中の新鉱床の開発に際して,鉱床近傍の坑道に断熱ライニングを適用することを考えている。
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