本研究は最近特に著しい発展をとげつつある密度流解析の手法を用いて、沈澱池内の密度流現象を調べ、その成果を沈澱池の運転や設計に役立てることを目的としている。沈澱池内の流体に密度差が生じる原因としては懸濁物の濃度差と池内水の温度差が考えられるが、ここでは濁水に起因する濁度密度流について調べた。 今年度は 1.実験室内のモデル沈澱池を用いて濁度密度流現象の観察、測定から始めた。長さ5m、深さ1.5m、幅0.2mの水槽の上流部から整粒した粒子を含む濁水を一様流入させて密度流現象を生じさせた。そして密度流の発生状況、密度流速の最大値、死水域の状況などを三次元電磁流速計や手製の濁度計を用いて測定した。 2.実験は、懸濁粒子の沈降速度と沈澱池内の平均流速との比、および密度流の強弱に直接関連する密度フル-ド数の二つのパラメ-タを種々変化させて行い、現象の特徴を簡明に把握するようにした。 3.これらの実験結果から得られた知見にもとずいて、沈澱池内の密度流現象を記述する数式モデルを作製した。現象解析の第一段階として、池内の乱流拡散係数を一定とし、運動方程式には境界層近似を用いた。えられた数式モデルが上に記した実験の結果を良く再現することを確認して、このモデルの有効性を検証した。 次年度は 4.より実際的なモデルとして、池内の乱流現象にK-εモデルを用いて解析して、沈澱池内の密度流に関してより詳細な考察を進める予定である。 5.本研究の題目に関連する事項として、傾斜板による沈降促進効果、静水中に投入された土粒子により生じる濁度密度流現象などについても検討を進めている。
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