横流式沈澱池の濁度密度流について調べた。この現象は沈澱池内に流入した濁水が、流入後下降しながら流下する現象である。この密度流が発達すると、濁水が池内を高速で流下することにより、すでに沈積している粒子を底部から巻き上げ、再浮上させる。同時に沈澱池の水面近傍に逆流域を含む死水域が生じて、沈澱池の機能が低下する。この種の現象は広く知られており、また、沈澱池の撮作上も解明すべき重要な事項であるが、現象が複雑なために今日まで十分には調べられていない。この研究では、沈澱池内の濁度密度流の基本的な性質を明らかにする目的で、モデル沈澱池による実験的検討と、数式モデルによる理論的解析を行った。 沈澱池のモデルとして幅20cm、長さ5m、深さ1.5mの水槽を用い、濁質としては、整粒した石英砂を用いた。種々の条件における密度流の流速分布と濁質の濃度分布を測定して、現象の特徴を調べた。また、理論解析では、流体及び粒子の保存則と、境界層近似をした運動方程式とから現象を表す数式モデルを導いた。このとき、密度差の取り扱いについてはブジネスク近似を用い、また池内の渦動粘性係数は一定とした。この取り扱いにより、現象は密度フル-ド数Fdcと、無次元渦動粘性係数Kとにより特徴ずけられる。 この数式モデルの数値解が実験結果を精度よく再現することを確認した後、これら二つのパラメ-タの値を種々変化させて濁度密度流現象を検討した。例えば、密度流の代表流速、死水域の発生状況、等濃度線の形状などとFdc、Kとの関係を求めてその特徴を明らかにした。これらの結果には何れもFdcやKの値が小さくなるにつれて密度流現象が顕著になる様子が明確に表れている。また、密度流の最大流速に関しては実用的な近似式も示した。
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