研究概要 |
1金属中の水素の存在状態:周期律表Va族の金属に合金元素を添加すると水素の固溶限が増大する。この機構を明らかにするため、本研究ではNaに小さな原子半径をもつMoを添加した系につき、イオンチャネリング法で水素の存在状態を調べた。チャネリング実験は“Bビ-ムを用い、“Bビ-ムのチャネリング効果と^1H(^<11>B,α)ααの核反応による水素検出法を組合せた。Nb中では水素は格子間四面体位置(Tーサイト)を占めるが、Nbー3^<at>%Moでは、室温で水素はTーサイトから最近接格子点の方向に約0.6【.Angstrom】ずれた位置を占め、373KではTーサイトを占めるようになる。これは、水素が室温ではMo原子に捕らえられ、373Kでは捕獲から自由になってTーサイトを占めることを示している。このときMo1個あたり0.7〜1.0個の水素が捕えられている。Nbー10^<at>%Moのよると水素は同様に捕えられるがMo1個当りの捕獲の割合は約0.3個に減少する。これらの結果からMo濃度が低い時は、水素の固溶限増大は合金元素による水素の捕獲機構によることが示された。 2金属中の稀ガス原子の存在状態:金属中に重い稀ガスをイオン沈入すると、注入量が多い場合、室温でも稀ガス原子の固体が形成されることが知られている。これらは従来電子回折、顕微鏡法で調べられているが、稀ガスの析出の初期過程を調べるため、本研究ではAl中のKrについて、He^+イオンによるチャネリング法によりその格子位置を調べた。Krは50keVで10^<14>ー10^<16>Kr/cm^2の量を室温で注入された。1×10^<14>Kr/cm^2の注入でもKrの一部は析出しており、他は格子位置、四面体位置(Tーサイト)、八面体位置(Oーサイト)を占め、これらの占有割合は注入量と共に変化する。この変化の測定から、注入の初期過程において、KnとKrの注入時に生成された原子空孔との相互作用により、Krと原子空孔との集合体が形成され、こらがKrの析出の核となって成長することが示された。
|