研究概要 |
化学的性質が非常に類似している元素群の代表例であり、実操業においても相互分離が極めて困難なCe,Pr,Ndの溶媒抽出による分離効率の向上を試みた。従来の溶媒抽出法では溶媒相中の抽出剤と水溶液相中のそれぞれのレアア-ス金属の単一イオンの反応によって水に難溶性で溶媒相に溶け易い化学種を生成させて目的金属イオンを溶媒相に抽出している。この方法では高い抽出率は実現できても、本研究でとりあげた系のように化学的性質が酷似しているイオン間の相互分離は極めて困難である。そこで水溶液相に金属イオンと錯体を形成する化合物を添加し、水溶液相中の各イオンと錯体形成剤との親和力の差を利用して各イオンの抽出され易さに差をつけ、相互分離の向上を図る方法の可能性を検討した。 本年度の研究ではD2EHPA〔Di(2-ethylhexyl phosphoric acid)とPC-88A(大八化学,2-ethylhexyl hydrogen 2-ethylhexyl phosphonate〕の酸性有機リン酸化合物を使用し、水溶液相へ添加する錯体形成剤としてDTPA(diethylene triamine pentaacetic acid)を採用した。 D2EHPAおよびPC-88Aによる抽出平衡を種々のpHで求め、錯体形成剤の水溶液相への添加の影響を調べた。 D2EHPAによる抽出では、抽出剤と金属イオンの親和力が強く、水溶液相へのDTPAの添加の効果は非常に小さく、相互分離の改善はみられなかった。一方、PC-88Aを用いた場合には、錯化剤無添加ではNd>Pr>Ceの順で抽出率が高いが、互いに抽出率が近い値をとる。DTPAを添加するとpHが1.8以上ではCe>Pr>Ndの順で抽出率が高くなり、抽出率に大きな差がみられるようになる。また、抽出の速さにもイオン間で差がみられ、分離の向上が平衡値および速度の両面から期待される。
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