申請では、初年度はまず、(1):元差熱分析でNa_2B_4O_7ーFe_2O_32示系状態図の作成を達成し、その結果をもとに、平成2年度は (2)基礎試料として市販Fe_2O_3試薬を用い、ほう砂(Na_2B_4O_7)フラックスとの混合粉を1200℃で加熱溶融し、所定の時間保持後冷却速度で800℃まで降温凝固させ、高純度酸化鉄結晶を析出させる。その融解物を熱10%HNO_3溶液で処理し、可溶のフラックス部と不溶の酸化鉄結晶をろ過分離する。その際に、晶出するFe_2O_3結晶の粒度、形状、純度および回収率におよぼすFe_2O_3結晶成長促進剤であるCuOあるいはNaFの添加によるフラックス組成の変化、Fe_2O_3/ほう砂化、溶融温度での保持時間、冷却速度など実験条件の影響を調べる。平成3年度は (3):各種鉄鉱石へ拡張する計画であった。しかし、初年度の(1)のNa_2B_4O_7ーFe_2O_32元系状態図作成試験では、実験を延長しての精査が必要であることを認めた。そこで、平成2年度は(2)、(3)の試験も並行して行った。その結果、次のような知見を得た。1)Na_2B_4O_7ーFe_2O_32元系状態図は単純な共晶型であり、その共晶温度は725℃、共晶濃度は約9%、45%Fe_2O_3試料の液相線温度は1246℃である。2)亜鉛浸出残渣の脱鉄処理から得られる酸化鉄(Fe_2O_3:74.59%、Zn:0.60%、S:4.49%、etc)から高純度酸化鉄(Fe_2O_3:99.8%以上、Zn:0.02%、S:0.002%)の製造が可能である。また6銘柄の赤鉄鉱から99.5%以上の高純度酸化鉄が得られる。CuO添加は純度を低下させる。3)酸化鉄結晶の収率は、被処理酸化鉄/ほう砂比を9/11に高め、冷却速度を10℃/minとし、CuOとNaFを添加する条件で、80%以上が得られる。4)溶融温度における保持時間は3minで十分ある。Na_2B_4O_7ーFe_2O_32元系状態図作成試験では、Na_2B_4O_7が僅かながら気化することを認めたので、平成3年度はその問題の解決する実験を行なうとともに、他の安価で有用なフラックスの選択実験を行う。
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