研究概要 |
KOH水溶液中における亜鉛上の水銀の濡れを解析するために、KOH水溶液ー水銀間の界面張力の測定を行った。測定は静滴法で行い、水銀の静滴を写真に撮り、その形状をプラス方程式に従い計算機で解析し求めた。その結果、KOH濃度2mass%で340mN/m、KOH濃度37mass%で360mN/mとなり、KOH濃度が大きくなるにつれ若干界面張力が大きくなることがわかった。 前年度測定したKOH水溶液の表面張力値やこれまで報告されている水銀の表面張力値を用い、さらに固体亜鉛との界面張力は測定できないのでアントノフの法則が成立すると仮定し、KOH水溶液中での亜鉛上の水銀の拡張係数を算出した。その結果、拡張係数は大きな正の値となり亜鉛上で水銀は良く濡れることがわかった。またその傾向は、KOH濃度が大きくなる程強くなり、水銀を均一に薄く亜鉛上に濡らすには、ある程度のKOH濃度が必要であることがわかった。以上の現象は定性的ではあるが実際にKOH水溶液中で亜鉛と水銀の濡れ実験を行い、確認された。 アルカリ乾電池の負極活物質である亜鉛の自己放電を抑制するための水銀量を減らすために、第3、第4の添加元素が開発されている。これを水銀との濡れの観点から検討するため、KOH水溶液中で種々の元素と水銀との濡れの評価を行った。良く濡れる元素に対しては浸漬高さ、濡れない元素には静滴法を適用した。その結果、Al,Bi,Cd,In,Sn,は良く濡れることがわかったが、一方Fe,Co,Cu,Ni,Caは濡れないことがわかった。この結果とこれまで経験的に亜鉛に対する水銀添加量低減効果が認められた元素とを比較すると、亜鉛と良く濡れる元素は効果的で、濡れない元素は悪影響を与えることがわかった。これは、亜鉛上で水銀が薄く均一に濡れることが重要であることと対応している。
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