本研究は鉄鋼業では投棄されている溶銑中の珪素を半導体材料あるいはシリコン系新素材の原料として活用するための基礎的知見、基礎デ-タを蓄積することを目的にしている。 炭素飽和のSi含有溶鉄を水素雰囲気中で溶解しておき、この溶鉄の底まで黒鉛製のランスを差込んで、ここから窒素と塩素の混合ガスをインジェクションした。測定のパラメ-タは、温度、ガスの流量、および試料重量とした。 その結果以下のことが明らかとなった。 1)温度1350、1400、1450℃の3点で反応速度をしらべた。その結果、反応速度はいずれの温度においても、見掛け上Si濃度に関し一次反応速度式で整理できることが分かった。 2)反応速度式と反応速度定数の関係はアレニウスの関係で記述できることが分かり、その見掛れの活性化エネルギ-は60Kcal/molとなった。 3)混合ガスの流量を変え流速の効果を調べたところ、50ml/min以上では影響のないことが分った。 4)試料の量を増加させると塩素の利用効率が上がることが分った。これは気泡が溶鉄内に長い時間滞在できることによるもの、と考察した。 以上の知見より、以前に報告したFeCl_2を用いる方法でなくとも、溶銑の脱珪ができることがわかった。本方法によると副産物としてHClが生成するので、今後その生成量を最小にすることを研究する必要がある。
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