本年度は、まず無電解CuメッキあるいはNiイオンプレ-テイングしたアルミナ基盤と溶融Alの接触角(θ)に及ぼすコ-テイング膜厚(δ)及び温度(T)の影響を調査した。973Kでは、Cuでは膜厚δ=0.3μm以上でθ=30°以下、皮膜の密着性の良いNiではδ=0.1μm以上でθ=10°以下まで減少し、いずれも安定した濡れ性が得られた。Niの場合、1073Kでは膜厚がδ=0.5μm、1173Kではδ=0.8μm以上あれば、やはりθ=10°以下となり良く濡れた。これらの臨界膜厚以下の場合にはθは急激に大きくなり、また液滴滴下後に一旦濡れてもその後θが上昇する現象が起こりやすく、コ-テイングなしの場合のθに近づいた。Cuの場合には、1073Kおよび1173Kでδ=0.3μm〜4.5μmにおいて同様にθの再上昇現象がみられた。この現象は、高温保持によりコ-テイング層に生成した欠陥のため、溶融Al自身の表面張力で引き戻されたことによる。ついで、Cuコ-テイングしたアルミナ繊維間隙への溶融Alの溶浸過程について、真空雰囲気での圧力溶浸法および静置法により調査し、溶浸圧力、温度、繊維の充填率、分布およびCuコ-テイング量と、繊維間隙への溶融Alの浸入速度、浸入量および気孔率分布との関係を明かにした。また、アルミナ繊維に圧入後、繊維間隙で一方向凝固したAlーCu合金の凝固組織を測定し、1次ア-ムおよび2次ア-ムスペ-シング(d1およびd2)は、繊維充填率が十数%程度までは凝固条件とCu濃度に支配され、繊維の影響はほとんど受けないことを明かにした。さらに、固体間隙形状を単純化して、数十μm〜数百μmの間隙の黒鉛平板間におけるAl合金の一方向凝固実験により凝固条件と組織の関係を定量的に調査して、d2に近いオ-ダ-の間隙ではd1は通常のバルク試料の場合より大きいことを見いだし、その生成機構について解析した。
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