熱間押出し加工の加工条件の最適化の検討と加工過程の力学解析に必要な、加工素材の変形抵抗に関する研究と熱間押出し加工用ダイスとしての高温強度に優れるとともに極めて平滑な滑り面を形成出来るセラミックス型の有用性に関する研究を中心としたいくつかの実験と数値解析を行った。以下に研究成果の概要を記す。 1.AlーMgーSi(6063)合金の加工硬化率式と純アルミニウムの加工硬化率を比較して、合金化による変形特性の改変を定量的に検討した。6063合金の変形抵抗は400℃以上の温度で変形抵抗を律則する動的回復速度が純アルミニウムの場合と同様に温度上昇に対して緩やかに増加する特徴を示す様になり、押出し加工過程における変形領域内部の変形抵抗分布は同領域内部のひずみ速度の分布に大きく依存し温度変化に対して緩やかな応答を示すことが分かった。この他、合金化による変形抵抗の温度およびひずみ速度依存性の変化は400℃以下で著しい、200℃から300℃の範囲では変形温度毎の動的回復挙動が大きく異なる、などの事象を明らかにした。 2.セラミックス(Si_3N_4あるいはPSZ)を型材に用いた場合の塑性流れと加工品の表面性状に検討を加えた。その結果、セラミックス材の熱伝導係数が小さいことによる断熱効果により型近傍の素材温度の低下が抑止されて変形抵抗が低く保たれるためにデッドメタルゾ-ンが鋼型を用いる場合に比較して薄くなる。押出し比を小さくして素材が型面で滑る様にした、セラミックスと鋼を対面させたダイスを用いた押出し加工実験によると、セラミックス側から押出された加工品表面が鋼側から押出された加工品表面よりも光輝面となる結果を得た。以上のことから、ビレット温度を高温度に維持すべき部分例えば薄肉断面部分、およびダイベアリング部分にセラミックスを用いる、セラミックスと鋼を組み合わせたダイスが熱間押出し加工用ダイスとして有用と考える。
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