3種の代表的セラミックスのイオン注入による表面特性の変化について、【.encircled1.】表面硬度の変化、【.encircled2.】損傷微細組織、【.encircled3.】非晶質形成の関連から検討した。 セラミックス材料として代表的なアルミナ(Al_2O_3)単結晶の場合、表面硬度は注入初期には増加するが、注入量の増加とともに軟化し、そののち一定となる。微細組織観察の結果、初期の硬化は注入による欠陥クラスターの形成によって生じ、軟化は表面層が非晶質化することによることが分った。この硬度特性には結晶粒界の効果が認められ、純度の異る多結晶の場合、単結晶に比べて硬化量は大きく軟化量は少ない。またこの場合の非晶質の形成は結晶粒界からはじまる。これは助結材であるSiO_2の非晶質化が極めて早く起るためである。 典型的な共有結合性材料である窒化硅素(Si_3N_4)の場合、イオン注入による硬度の挙動はアルミナと同様であるが、非晶質化に要する注入量ははるかに少ないため、極めて早く軟化する。 イオン結合性の強いジルコニア(ZrO_2)の場合、注入によって硬化のみで軟化は生じない。これは欠陥クラスターの形成のみが起り、非晶質化には経らないことに原因がある。 このようにセラミックスの表面改質は、内部歪の増加という従来の機構に対して、照射欠陥の集積による非晶質の形成が最大の原因であることを明らかにすることができた。
|