研究概要 |
ホウ化ケイの中でSiB_6は、熱起動力が大きい、熱伝導度が小さい、耐酸化性に優れるなどの特長を有することから、高温熱変換材料として期待される。しかし、SiB_6は直流電気伝導度が小さいため、現在必ずしも十分な性能には達していない。そこで、TiB_2やSiB_4などの導電性の高い材料をSiB_6に複合化する必要がある。また、複合化する材料の分散相の大きさをナノメ-タ程度の大きさに分散したいわゆるナノコンポジットを合成することにより、熱伝導が界面で散乱されることから、熱伝導度が著しく低下することが予想される。そこで、本研究ではナノ構造制御に最も有望と考えられるCVDによりSiB_6+SiB_4およびSiB_6+TiB_2ナノコンポジットの合成を試み、それらの熱電特性を調べ、高性能高温熱電変換材料を開発することを目的とした。 原料には、SiCI_4B_2、B_2H_6、TiCI_4およびH_2ガスを用い、直接通電により加熱した黒鉛基板上に種々のナノコンポジットを合成した。SiB_6+SiB_4ナノコンポジットは、合成温度(Tdep)1573K、炉内全圧力(Ptot)4KPa,BISi原料ガス比(m_B/_<si>)0.8〜2.8のCVD条件で得られた。SiB_4の複合化によって熱伝導度は低下し、電気伝導度は上昇し、ゼ-ベック係数はほとんど変化しなかったことから、性能係数は約1000K以上で著しく増大した。このSiB_6+SiB_4ナノコンポジットは新しい高温熱電材料として有望であることは明らかになった。SiB_6+TiB_2ナノコンポジットはTdep=1673〜1773K、Ptot=4KPa、Si/Ti原料ガス比(m_<si>/_<Ti>)10.3のCVD条件で得られた。TiB_2の複合化によって、熱伝導度の低下を電気伝導度の上昇が著しく、高温導電性断熱材料として有望であることがわかった。しかし、TiB_2を6wt%以上複合化することゼ-ベック係数が著しく低下するため、この材料を熱電材料として応用するためには、より詳細にTiB_2含有量とゼ-ベック係数の関係を調べる必要がある。
|