1.Cr、Al、Si、Cu、Moのうち1種または2種の元素を含むNi基2元・3元合金中の整合析出物の粗大化挙動を透過型電子顕微鏡により観察し、得られた電子顕微鏡写真を画像解析した結果、 (1)析出物と母相間の格子ミスフィットδが小で従って弾性拘束の弱い合金系(NiーCrーAlやNiーSiーAl合金のγ'(Ni_3X型析出物)では、析出粒子の粗大化挙動は、オストワルド成長理論として現在広く知られているLSW理論あるいはLSW理論を析出量について修正したMLSW理論により説明できること、 (2)δが大きく従って弾性拘束の強い合金系(NiーCuーSi合金のγ'析出物、NiーMo合金のNi_4M_o析出物)では、例えば粗大化の遅滞や、粒子サイズの均一化即ち組織の均一化など、界面エネルギ-のみを駆動力とするLSWないしMLSW理論では説明不可能な現象が見られること、 (3)上記(2)の現象は、格子ミスフィット、粒子の界面エネルギ-および析出物の体積比の3者間のかねあいで決まり、ミスフィットが大きいほど、界面エネルギ-が小さいほど、そして体積比が大きいほど、顕著に現れること。 などを明らかにした。 2.界面エネルギ-に加え弾性エネルギ-をも考慮した新しい組織安定性理論であるBifurcation Theory(分岐理論)に基づいて、上記の各合金系のエネルギ-状態を計算し、整合粒子を含む組織が均一化および粗大化の何れの方向に変化するのかを表したBifurcation Diagram(分岐図)を求めた。分岐図に基づき、組織変化に対する格子ミスフィット、界面エネルギ-および析出物の体積比の効果を反映した新しい組織パラメ-タを提案し、そのパラメ-タの有用性を示した。
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