本研究では、界面反応やコ-ティングによる劣化のメカニズムを解明し、定量化するため、γーアルミナ繊維強化アルミニウム基複合材料の室温および高温での引張強さにおよぼす反応生成物の影響、および繊維とそれを取り巻くコ-ティング層(反応層)との力学的相互作用に関する実験および理論的検討を行ない、以下の有用な結論を得た。 (A)アルミナ繊維強化アルミニウム基複合材料ではマトリックスへの銅添加によりCuAl_2が形成された。この化合物は変形早期に破断し繊維表面にクラックを形成した。その結果、繊維および複合材強さは化合物が形成されない場合に比して低下した。そこでクラック先端での歪エネルギ-解放率を計算したところ、繊維強さは反応化合物層の厚さの増加と共に低下することを定量的に記述できた。またこの化合物は室温では脆性的であるが、423Kでは塑性変形を開始するため、この温度での複合材強さは室温に比べ高くなることを実験的に確認し、さらにモデル計算によりこの現象を定量的に説明した。 (B)コ-ティング層(反応層)の付着した繊維の強さに関する新らしい計算方法を提案した。この計算方法ではコ-ティング層のヤング率が繊維のそれとは異なる場合の強さをかなり精度良く求められた。特にコ-ティング材の選択および設計などに本計算方法は有用であり、今後広く用いられるようになるものと思われる。また本計算方法を用いることにより、高弾性型および高強度型の炭素繊維の臨界歪エネルギ-解放率は3および2J/m^2と求められた。実用上重要なこれらの繊維の破壊靭性をはじめて明らかにした点は大きな成果である。
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