本研究では、P/M7475アルミニウム合金の高ひずみ速度における超塑性変形中の組織変化を、各結晶粒ないし亜結晶粒の間の相対方位差に注目して詳細に解析し、その結果をもとにここでの変形機構について検討した。得られた主な結果はつぎのようにまとめられる。 Zrを0.3%以上添加すると組織は微細化されるが、変形とともに結晶粒径は増大し、0.3%添加では超塑性の発現は見られなかった。0.7%および0.9%添加したものは10^<-2>s^<-1>以上の高ひずみ速度で大きな伸びが得られた。特に0.9%添加の試料においては初期ひずみ速度3.3x10^<-1>s^<ー1>と高ひずみ速度において400%以上の伸びが得られた。Zrを0.9%添加した試料の初期ひずみ速度3.3x10^<-1>s^<-1>における変形中の粒界の相対方位差の変化を調べた結果、引張直前では方位差の大きい高角度の粒界と低角度の粒界(亜粒界)が混在しており、20%変形では変形前の状態を保持しているが、80%まで変形すると亜粒界が減り、高角粒界がやや増える傾向が示された。さらに280%まで変形すると80%変形のものよりさらに亜粒界が減り、高角粒界が増える結果となった。この時の逆極点図を調べた結果、引張直前では結晶粒の面法線は〈011〉方向に、これと垂直な引張方向の方位は〈111〉方向に集積しており、80%まで変形すると面法線は多少の方位のランダム化がみられるものの〈011〉方向に集積する傾向のあることがわかった。一方、引張方向では20%〜80%変形の間にランダムとなる結果となった。以上の結果と20%〜80%変形の間で粒界すべりが観察されなかったことより、20%〜80%変形の間に起こる低角粒界の高角化は粒の回転によるものと考えられる。この20%〜80%変形中に生じた高角かつ微細な結晶粒組織が高速超塑性の発現に重要であることが結論された。
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