研究概要 |
S,Te,Se等のカルコゲン元素を含む非晶質は、熱的、電気的あるいは光学的な外的因子によりその構造を大きく変化するなど興味ある物性をしめすものが多い。とくに、非晶質ー結晶間の相変化速度がきわめて速い薄膜では相変化型の大容量情報記録材料の候補として注目されている。しかし、これまで取り上げられた材料は主要元素として、Te,Seを含有しており、安全性の点で問題が指摘されている。本研究ではこの立場から、硫黄S系のカルコゲナイドを検討することとした。非晶質形成能と特性制御の観点からとくに、SbーS,SbーSーGe系をとりあげた。 イオンビ-ムスパッタ法により作製した薄膜について、組成が非晶質講造、結晶化過程、電気伝導および光学的特性におよぼす効果を示差走査熱量分析、X線回析、透過電顕観察などにより検討した。非晶質構造はSbーS,SーSなる原子鎖の四面体的な配位により特徴づけられ、組成によりその結合欠陥量が変化した。また、伝導特性は半導体的であり、バンドギャップが組成に依存すると推定された。光学的には、近赤外領域で透明で光吸収端の波長は膜組成により大きく変化し、Sb_2S_3の化学量論組成より過剰なSb,S,Ge原子の存在により長波長側へ移動した。結晶化により形成される相も膜組成に依存し、Sb量が多い場合には、SbとSb_2S_3の二相組織となったが、低Sb組成、およびGe添加の膜ではそれぞれSb_2S_3、Sbの単相組織となった。前者では結晶化に伴う大きな光透過率の減少が見いだされた。これらの結果より硫黄S系カルコゲナイド非晶質も他のカルコゲナイドと同様応用上興味ある材料特性を示すことが明かとなった。
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