研究概要 |
鉄基非晶質合金の水素脆化感受性に及ぼすB,Pの影響を,水素吸収による延性ー脆性遷移温度(DBTT)および電気抵抗の変化を測定することによりしらべた。その結果を以下に示す。 (1)Fe_<78>(B_<1ー>xPx)_<15>Si_8非晶質合金(x=0〜1.0)において、Bは水素脆化感受性を高めるのに対し、Pは水素脆化感受性を低下させることが明らかとなった。すなわち、B含有量が増加すると、僅かな水素の吸収によりDBTTは大きく上昇するが、P含有量が増加するとDBTTの上昇は小さくなる。 (2)水素吸収した合金の電気抵抗,メスバウァ-効果およびDSC測定の結果から、非晶質合金中の水素の存在状態は、DBTT付近を境に変化すると考えられた。DBTT以下においては、水素はBやP原子と水素化物に近い状態で結合することにより脆化を生ぜしめる。DBTT以上では、BーHやPーH結合は解離し、脆化の回復が生ずると考えられた。 (3)P含有量の増加による水素脆化感受性の低下は、PーH原子間の親和力がBーH原子間の親和力に比べて小さく,PーH結合はBーH結合にくらべて生じ難いためと推定された。 (4)メカニカルアロイング法を用いてFeーTi系非晶質合金粉末を作製し、これを固化して水素吸蔵材料を作ることを試みた。現在、MA処理によりFeiーxTix合金でX=0.3〜0.5の範囲で非晶質化が可能であることが明らかとなった。これらの粉末の固化成形および水素吸蔵特性に関する研究は今後の課題である。
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