研究概要 |
過去2年間の研究結果をもとに、非晶質合金の水素脆化機構について考察するとともに.放射光小角散乱の測定により、水素吸収による非晶質構造の変化を調べた。その結果をまとめると次の通りである。 (1)Fe_<78>(B_<1ーx> Px)_<15>Si_7非晶質合金に水素を吸収させるとDBTTが明瞭に観察されるようになる。電気抵抗,メスバウア-効果およびDSC測定の結果から、非晶質合金中の水素の存在状態はDBTT付近を境に変化すると考えられた。DBTT以下においては、水素はBやP原子と水素化物に近い状態で結合することにより脆化を生ぜしめる。DBTT以下では、BーHやPーH結合は解離し、脆化の回復が生ずる。 (2)Fe_<78>B_<15>Si_7およびFe_<78>P_<15>Si_7非晶質合金に電解水素チャ-ジを施すと、その直後においては小角X線散乱強度に変化は認められなかった。したがって、これら合金においては水素チャ-ジ中に小角X線散乱法によって検出されるようなボイド等の欠陥は形成されていないことが明らかである。また、これら合金を室温で保持もしくは加熱すると、小角散乱強度は増加するが、その増加の程度はFe_<78>B_<15>Si_7合金の方が、Fe_<78>P_<15>Si_7合金に比較して非常に大きい。したがって、Fe_<78>P_<15>Si_7合金の方が水素の影響に対して、構造的に安定であることが明らかである。
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