研究概要 |
光音響分光法(PAS)は,高い検出感度とリアルタイムの応答性を有し,しかも光学的に厚く不透明な物質,散乱性の強い物質に対してもその吸収特性を測定できるという特徴があり,一分光法にとどまらず新しい分析法,非破壊試験法などへの展開が期待される。本研究ではこれらの特徴を有するPASを従来困難とされていた溶射皮膜の特性試験に応用する立場から研究計画に従い検討を行い,以下に示すような成果を得た。 1.固体の光音響効果に関するRG理論によれば,光音響信号強度は試料の熱的性質に依存する。このことは溶射皮膜内部に存在する気孔あるいは皮膜と基材との密着が不十分な場合に両者の界面に存在することになると考えられる空気層をPASによって検出できることを示唆するが,本研究において気孔の量が多い皮膜及び密着性の悪い皮膜の場合,光音響強度が大きくなることを実験的に確認した。 2.PASの特徴の一つはリアルタイムでの信号検出が可能なことであるが,光音響スペクトルの測定においては波長選別を行う分光器の機構上,かなりの時間を要する。そこで本研究では,情報量は制限されるが,測定時間を大幅に短縮できる特定波長についての光音響強度を測定する方法について検討を行い,その有効性を明らかにした。
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