研究概要 |
1.4-ピリドン類の合成と確認 図1に示す4-ピリドン類のうち、n=1,2,4,6,8,10,12のアルキル鎖を有する7種の化合物を合成し、元素分析、IR,NMRスペクトル、融点測定などを行い、合成した化合物の構造と純度を確認するとともに、目的化合物が得られていることを確認した。 2.抽出平衡の検討 (1)合成した4-ピリドン類の酸解離定数〔Ka〕及び分配定数(KD)を求めた。その結果、Kaはアルキル鎖の長さを変えても変わらないが、K_Dはアルキル鎖中の炭素数(n)とともに増大し、両者の間にはlogKD=0.52n+1.42で表わされる直線関係があることがわかった。 (2)レアメタルとしてInを選び、各4-ピリドン類を用いて抽出実験を行い、錯体の結合比、半抽出pH、分配比(KDC)、抽出定数(Kex)、安定度定数(β_3)を求めた。その結果、Inは1:3(金属:配位子)錯体としてジクロルエタンに抽出される(半抽出pH=)ことがわかった。また錯体の抽出定数はlogKexとして2.16〜2.57、安定度定数はlogβ_3として32.26〜32.64の範囲にあり、アルキル鎖長による影響は認められなかったが、KDCはnに比例して増大し、両者の間にはlog KDC=1.67n+2.46で表わされる直線関係があることがわかった。 以上の結果より、4-ピリドン類は、Inと極めて安定な錯体を形成して有機相に抽出され、抽出剤及び錯体の有機相への分配はアルキル鎖長を長くすることにより増大かつ制御できるので、少くともInの工業抽出剤として有用と考えられる。他のレアメタルの抽出についても目下検討中である。
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