環境汚染物質とフミン物質との相互作用を調べ、汚染物質のフェイトアナリシスのための基礎的プロセスを明らかにしようと試みた。先ず、凍結保存海底体積物よりフミン酸を抽出し試料とした。フルボ酸も一部抽出したが試料量が少なく一連の実験には使用できなかった。本年度得られた研究結果を次に挙げる。 1.フミン酸の^<13>CNMRによるキャラクタリゼ-ション:2種のフミン酸について固体試料のNMRスペクトルを測定し、芳香族性ファクタ-を求めた。海洋フミン酸BS-14はfaromaticity=0.17、市販Aldrichフミン酸はfa=0.20で市販フミン酸の芳香族性が高かった。 2.フミン酸の会合状態:フミン酸の0.02%の水溶液について光散乱法によりその形状の推定を行った。強い光吸収のため正確な値を得るのは難しいが、海洋性フミン酸で直径300Å、Aldrich 490Åのやや糸のほぐれた糸まり状であることがわかった。塩を加えると海洋フミン酸の直径は、200Åになりコンパクトな形状に変ることが明らかになった。 3.有機化合物との相互作用:フミン酸の低濃度培液(〜0.01%)についてピレン、イコサンとの相互作用を主として蛍光および吸収スペクトルにより調べた。多環芳香族化合物との相互作用は市販フミン酸の方が海洋フミン酸より強く、直鎖炭化水素ではその逆であった。これらの系に塩を加えるとピレンとフミン酸との相互作用はより強くなった。蛍光スペクトルからAldrichフミン酸と結合したピレンは芳香族性の強い環境に存在することがわかった。アントラキノン系分散染料とフミン酸との相互作用においても、芳香族性の高いAldrichフミン酸との結合性が強く、海洋性フミン酸との作用が強くなるのはフミン酸の高濃度領域だけであった。これらの結果から、フミン酸の化学構造と培液中での形状が汚染物質との相互作用に大きく影響することが明らかになった。
|