1.ICPをイオン源とする質量分析は、水溶液試料を導入することにより多くの元素についてpg/mlの桁まで測定できるという高感度さのために近年大いに注目されている。しかし、試料溶液中に多量の共存元素があると大きな干渉を示すことが知られており、その干渉のメカニズムを探り、できるだけ干渉の少なくなるような試料調整および導入方法の確立が重要な問題となっている。本年度は先ず種々の共存元素により目的元素の信号にどのような影響があるか、まらそれらの影響はイオン源であるICPの操作条件や、質量分析計のイオンレンズの電圧設定によりどのような変化があるかを調べた。 2.目的元素として、Co、y、In、LaおよびAlを選び、LiからPdまでの14の共存元素それぞれについての影響を調べた。目的元素の濃度は10^<-6>M、共存元素の濃度は10^<-2>Mとした。その結果、目的元素の信号はどの元素についても共存元素の原子量が増加するにつれて信号が減少することが分かり、従来から他の装置で報告されたのと同様な結果が得られた。ただ、信号の減少のしかたは単調ではなく、原子量以外にも共存元素のイオン化電圧の効果があることも明確となった。原子量の影響はサンプリングオリフィスの後の超音速ジェットにおける干渉であり、イオン化電圧の影響はプラズマにおけるイオン化平衡の移動によるものである。さらに、原子量の影響の程度はイオンレンズ設定電圧によっても変化し、これはこの部分における空間電荷の効果が無視できないことを示すものであった。 3.以上のように、共存元素効果の原因には少なくとも3種類の要因があることが明らかとなった。
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