誘導結合プラズマ質量分析法(ICPーMS)における共存元素の影響には、スペクトル的な干渉と非スペクトル的な干渉とがある。非スペクトル的な干渉の程度には装置間による差もあり、現在その機構は必ずしも明らかではない。ICPーMSにおける非スペクトル的な干渉機構の解明や干渉除去のため、種々の共存元素による干渉ならびに操作条件などを変えた場合の干渉の変化について検討を行った。 共存元素による信号抑制効果の原子量依存性が、本研究においても認められた。これはサンプラ-以降の超音速領域において、原子量の大きな共存元素との衝突により目的元素が散乱されるためであると考えられた。レンズ系の電圧設定による抑制効果の変化は、レンズ系内の空間電荷の影響によるものであると思われた。またより低いイオン化電圧の共存元素の場合により大きな抑制効果があることから、プラズマにおけるイオン化平衡のずれも無視できないことが分かった。抑制効果は、単一のメカニズムだけでなくいくつかが組合わさって起きると考えられ、抑制効果全体に対してこれらの原因の各々がどの程度関与するかは、使用している装置や操作条件に依存するものと思われる。また目的元素の感度が十分あれば、操作条件等により共存元素の影響を軽減できることが分かった。イオン化平衡のずれによる干渉は、内標準による補正も可能である。共存元素の影響は、一般に干渉元素の濃度の絶対量が問題となるため、干渉の軽減には試料溶液の希釈も有効であると考えられる。 スペクトル的な干渉では、共存元素から生ずる2価や酸化物イオンの重なりも問題となる。これらのイオンはプラズマの電位と関係するため、プロ-ブにより電位を測定したところ、2価イオンが生成しやすい条件下では電位が高くなった。ト-チを静電的にシ-ルドした結果、電位が下がり2価イオンを減少させることができた。
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