超小型フロ-式化学センサ-の開発と高機能化

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01550577
• 研究機関: 岡山大学
• 研究代表者: 伊永 隆史 岡山大学, 工学部, 助手 (30124788)
• 研究分担者: 高橋 照男 岡山大学, 工学部, 教授 (60032918)
• キーワード: センサ- / フロ-インジェクション分析法 / 超小型 / 高機能 / タンパク質 / ウシ血清アルグミン / 流通式 / 装置設計

研究概要

(1)第1年度は、フロ-式化学センサ-の超小型化と高機能化に必要な細管内流れに伴う溶質分散現象に関する基本特性を明らかにすることを目的に、数値解析法の改良による理論的研究と顕微鏡写真撮影と非撹乱系吸光光度検出の併用による実験的研究の両面から基礎的に検討し、分析装置工学や計測化学工学で分析計測装置設計の基本となる細管内層流と試料ゾ-ン分散との相関式を明らかにした。
(2)フロ-インジェクション分析法(FIA)はフロ-法化学センサ-の基盤技術で、流通式分析操作特有の迅速なセンシング機能と連続検知機能を有する。1989年には日本工業規格のFIA通則が制定され、公的に認知された。これにより、FIAを始めとした流通式センシング装置は、定量分析・測定技術としての活用はもとより、連続的・四次元的な計測・モニタリング技術を指向する先進的分析技術としての利用が将来的に期待される。研究代表者らの理論的考察と実験的研究によると、細く(Small-bore)、短い(Short)反応管流路と極低い(Slow)流速の流れと微小な(Small)フロ-セルを用いた超小型化(S^4)により、従来にない多くの利点をもつ実用性の高いセンサ-が得られることが分かった。本年度は、FIAの真の特長である流動・反応・滞留時間条件等の精密制御と精度・再現性の良さなどを要素技術とし、一般にSO_xの分子式で表され、FIAの適用が最適な分析対象と考えられる燃焼排ガス中の全硫黄酸化物の定量分析へ応用できるFIA方式センシング装置を開発した。
(3)生体試料中の微量タンパク質の高感度定量を目的とした超小型流通式センシング装置を開発するため、ウシ血清アルブミンを標準物質として、高感度で妨害物質の少ないブロモクゾ-ルグリ-ンを用いる色素結合法によりタンパク質検出を行い、S^4システムに従い試薬およびキャリヤ-液を極遅い流速で流すことにより実験的検討を継続している。

研究成果

• [文献書誌] T.Korenaga,T.Takahashi,et al.: "Dispersion Behavior of Solutes in an Ideal Laminar Flow with Small-bore Glass Tube" Bull.Chem.Soc.Jpn.62. 1492-1500 (1989)
• [文献書誌] T.Korenaga,T,Takahashi,et al.: "Experimental Study of the Dispersion in Laminar Tube Flow" AICHE J.35. 1395-1398 (1989)
• [文献書誌] T.Korenaga,T.Takahashi,et al: "Peak Simulation for Non-Segmented Continuous Flow Systems" Trends in Anal.Chem.8. 323-326 (1989)
• [文献書誌] T.Takahashi,T.Korenaga,et al: "A Numerical Solution for Dispersion in Laminar Flow Through a Circular Tube" Can.J.Chem.Eng.68. (1990)
• [文献書誌] 伊永隆史: "流通式自動分析装置の開発と品質管理・排水処理等におけるプロセス計測への応用" 山陽技術雑誌. 39. 1-34 (1990)
• [文献書誌] 伊永隆史、高橋照雄外3名: "フロ-インジェクション分析法による排ガス中の全硫黄酸化物の連続測定" 分析化学. 39. T29-T34 (1990)
• [文献書誌] 伊永隆史外22名: "フロ-インジェクション分析方法通則" 日本規格協会, 200 (1989)
• [文献書誌] 伊永隆史外11名: "図説フロ-インジェクション分析法ラボ・オ-トメ-ション基礎と実験" 廣川書店, 271 (1989)