1.親水性及び新油性配位不飽和錯体の合成 親水性のdioxocyalam(L^1)およびその疎水性誘導体octadecyldioxocylam(L^2)を合成するとともに、これらの配位子のコバルト(III)錯体を合成した。L^1のコバルト(III)錯体塩化物塩の単結晶の単離には塩酸の添加が必要不可欠であることを見いだした。この塩酸添加の方法によりL^2についても組成の明確なコバルト(III)錯体塩化物塩を得ることができた。またtetraphenylprophyrin(L^3)のマンガン(III)錯体も合成した。 2.親水性配位不飽和錯体と1価陰イオンとの錯形成速度などの測定 親水性錯体L^1のコバルト(III)錯体を用いて、塩化物イオンと亞硝酸イオン間の軸方向配位子置換反応をストップドフロ-法で測定し、dioxocyclam核に導入されたコバルト(III)がcyclam核内のコバルト(III)などと異なり軸方向配位子置換活性であることを見いだした。この成果は、応答速度の迅速な陰イオンキャリア-錯体を与える配位子を分子設計する上での極めて重要な知見である。 3.錯体の有機溶液を用いる液膜の電位応答特性 L^2のコバルト(III)錯体チオシアン化物塩のクロロホルム溶液、L^3のマンガン(III)錯体チオシアン化物塩のo-NPOE溶液などを液膜としてチオチアン化物イオンに対する応答ならびに電位応答に及ぼすpHの影響を検討し満足な結果を得、各種陰イオンに対する選択性序列評価の最適条件を明かにできた。4.Dioxocyalam-Co(III)錯体塩化物塩の分子構造を単結晶X線構造解析で決定した。この錯体には結合距離の異なる2種のCo-N結合が存在することなどが明らかになった。
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