研究概要 |
本年度(研究の最終年度)に行った研究の成果は下記の通りである。 1.表面波を利用する新しいタイプの“surfatron"キャビティ-を試作し、その性能を調べるために水銀のMIP発光分光分析を検討した。溶液中の水銀イオンを還元して水銀蒸気を発生し,これをヘリウムMIP中に連続的に導入する方法を用いて水銀の検出限界0.25ng/mlを得た。さらに本法を本学廃水処理施設に流入する廃水中の極微量水銀(0.65〜1.65ng/ml)の定量に応用し,満足すべき結果を得ることができた。 2.溶液中の臭化物イオンを酸化反応によって臭素蒸気に変換し,大気圧ヘリウムMIP中に導入する新しい臭素のMIP発光分光分析を確立した。最滴化された測定条件で得られた最高の検出限界は,100mMぺルオキソニ硫酸カリウム(5M硫酸)を酸化剤として用いた場合に得られ,Br(II)470.49nmで7.46ng/ml,またBr(I)734.86nmで18.4ng/mlの検出限界であった。さらに本法を海水中の臭化物イオンの定量に応用したところ,イオンクロマトグラフィ-やICP質量分析による分析値とよく一致する定量結果を得ることができた。 3.真空紫外波長領域でのMIP発光分析システムを実現し,硫黄の新しい大気圧ヘリウムMIP発光分光分析を確立した。この場合,溶液中の硫化物イオンを硫化水素に,また亜硫酸イオンを二酸化硫黄に変換してMIP中に導入し,特に硫化水素導入法の検出限界がS(I)180.73nmで0.14ng/mlという高感度な値が得られた。 4.MIP発光分析と同様にICP発光分光分析では,真空紫外波長領域での鉄鋼中の硫黄の定量を行い,さらにゲルマニウムの高感度分析のために水素化物発生法を結合し,0.06ng/mlの検出限界を得た。 5.前年度と今年度の2年間に実施した研究の成果をまとめて総括し,合わせて今後の発展のために反省点を挙げて本研究に終止符を打った。
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