アルデヒドは亜硫酸水素イオンと特異的に反応してヒドロキシアルカンスルホン酸イオンとなる。本研究では、この反応を利用したアルデヒドの陰イオン交換膜による選択的輸送挙動について解析するとともに、アルデヒドの濃度勾配に逆らった輸送、濃縮を行なった。さらに、膜による反応制御の目的で、同様な膜システム内において、アルカリ溶液中でアルデヒドから糖を生成するホルモ-ス反応を検討した。 膜のイオン型を変えてアルデヒドの輸送速度を測定したところ、塩化物イオン型の時は輸送されないが、亜硫酸水素イオン型にすることにより、ホルムアルデヒドは膜内の亜硫酸水素イオンと反応してヒドロキシメタンスルホン酸イオン(HMSA)となり、HMSAの生成と分解をくり返しながら、濃度差に基づいてホッピング輸送されることが明らかになった。受相に亜硫酸水素イオンを添加すると、膜内のHMSAイオンと受相の亜硫酸水素イオンとの間のイオン交換反応のために輸送速度は大きく増大し、亜硫酸水素イオンの濃度によってはホルムアルデヒドの濃縮も可能となった。他のアルデヒドの輸送速度については、硫黄(IV)との付加物の安定度定数の大きいものほど輸送量は大きくなった。 さらに、陰イオン交換膜を組み込んだシステム内におけるホルモ-ス反応については、陰イオン交換膜を介して水酸化物イオンが反応系内に供給されることによりホルモ-ス反応が促進されることが明らかになった。また、ギ酸が系から除去されてクロスカニッツァロ反応が促進されることにより、生成する糖の組成の変化も示唆された。この系とアルデヒドの選択輸送の系を結合するなら、アルデヒドを含む有機物の混合溶液から糖が効率よく生成されることになる。 このように反応系を組み込んだ膜システムは、有機物の選択的透過、濃縮、および生体系と同様の反応制御を可能にすることが示された。
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