研究概要 |
本研究の目的はF中心が複数個会合したM,or R中心と類似の凝集型色中心が電子-格子相互作用が小さくアルカリハライド中でPHBを生じることに注目し、これらと類似の色中心を無機ガラス中に生成せしめ、染料分子などのPHB中心をド-プなることなくPHBを実現を試みることである。 結論としてはイオン性の高いガラス中では孤立した酸素欠陥は生成し適当な光電子ドナ-の存在によりF(F^+)中心が生成することが明らかになったが、これらの凝集型中心の生成は観測できなかった。また、共有結合性の高いSiーO結合からなる編目構造からなるシリカガラスではイオン注入により酸素欠乏型欠陥が極めて高濃度生成することが見いだされたが、吸収・発光スペクトルからこれらの欠陥は零フォノン線がみられずホ-ルの生成は観測にできなかった。 しかしながら本研究の遂行により以下の新しい知見が得られた。 (1)カルシウムアルミネ-トガラスを強還元下で溶融するとフォトクロミズムを示すことを見いだした。フォトクロミック中心はカルシウムイオンに囲まれた酸素空孔とトラップされた電子によるものであることが光誘起ESRなどから結論された。また、ガラス中のF中心の光吸収帯の位置とイオン結晶中のそれとの比較により前者ではカチオンと酸素イオンの距離は後者の中より約20%長いことが示唆された。 (2)シリカガラスにSiやPイオンを注入するとSiーSiや酸素空孔が生成し、その濃度は注入イオン量とほぼ同程度であることがわかった。この結果は注入イオンが基板中の酸素と化学的に反応し酸素を引き抜くためと考えられる。ガラスと注入イオンの化学的相互作用を知るうえで関する興味ある知見である。
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