多結晶セラミックスの粒界が微視亀裂の進展に対してどの様な抵抗性を示すかに焦点を当てた。研究には粒界結合力に異にする4種類の多結晶スピネル(MgAl_2O_4)を用いた。これは立法晶系のため異方性が少なく、粒界に焼結歪を残さないため、上記の目的には都合の良い試料である。これらのスピネルは粒界結合力の相異により、その破壊様式が「完全粒界割れ」から「完全粒界内割れ」に渡る特性を有する。これらの試料研磨面の熱処理(1400℃、30分)による粒界エッチングの程度はその粒界結合力を良く反映していた。 熱エッチングした表面から所定の粒径(d)を有する粒を多数選出し、その中央にビッカ-ス圧子により種々の寸法を有するラジアルクラック(直径2C)を導入し、2c/dをパラメタ-として、IM法により求まる破壊靱性を粒界結合力の相異と関連付けて考察した。これと平行して、巨視的亀裂と粒界との相互作用を明らかにするため、小型弓張り試片(compact tension specimen)を用い、R曲線の測定を行った。その結果、亀裂進展に対する粒界抵抗性は、微視亀裂と巨視亀裂では著るしく異なることが明らかとなった。特に粒界の結合が小さい場合、微視亀裂から評価される破壊靱性値は、巨視亀裂に対するものと、それらの値、及び対応する破壊過程に本質的な相異の存在することが示された。 次年度き研究計画の概略を以下に示す。光学顕微鏡下での微視亀裂進展挙動を「その場観測」するための特殊材料試験機を今年度作製している。次年度は主に、この試験機を用い微視亀裂進展に対する「微視的R曲線」測定の技術を確立し、亀裂進展への粒界効果を明らかにする。
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