研究概要 |
実験には5室のイオン交換膜電解槽を組み、各室の隔膜として陽極側よりCMV(陽イオン交換膜)ついでAMV(陰イオン交換膜)を交互にセットした。脱塩室となる中央のIII室には、試料水を下方から上方へ、流速3cm^3/minで連続的に通過させ20、40、60分後に採取した処理水に対し、Limulus Testおよび日本薬局方発熱性物質試験を行い、発熱性物質の活性の有無を判定した。その結果、比較的低い電流密度条件である0.54、1.08A/dm^2で透析を行うと、経時的に分取した試料水は全てLimulus Test陽性(+)を示し、またウサギを用いたPyrogen Testでも、3匹(Rabbit A,B,C)とも0.6℃以上の体温上昇を示し発熱性物質の活性は陽性であった。ところが1.63A/dm^2以上の高電流密度条件で透析を行うと、透析開始後5分に分取した処理水から全てLimulus Testは陰性であり、さらにPyrogen Testにおいても0.6℃以上の体温上昇または総体温上昇が1.4℃以上のウサギは認めず、これら経時的に分取した試料水全てにおいて、発熱性物質の活性は陰性であることが判明した。すなわち、イオン選択性のあるイオン交換膜を使用し、しかも中性攪乱現象を激しく起こす高電流密度領域で透析したときのみ発熱性物質を失活できることが判明したわけである。次に本法の処理能力を検討するため、電流密度1.63A/dm^2の条件で種々試料水の流速を変えて透析を行い、その処理水に対して発熱性物質の活性を測定した。その結果、本実験系において、電流密度が限度であった。実際ベッド数200〜300床の病院では4m^3/day程度の能力が必要とされ、本法を利用するためには、スケ-ルアップ等種々検討する必要があると考えられる。本法は発熱性物質を除去するのではなく、失活させるため、Leakの危険性は全く考える必要はなく、従来の除去を主体とした膜法と比較して特筆すべき利点を有すると考えられる。
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