エキシマ-レ-ザ-パルスを集光し、銅を含む酸化物導電体などの無機化合物に照射すると、その光強度によって原子・イオンにまで分解されたり、クラスタ-で放出されたりすることがわかってきた。このレ-ザ-アブレ-ションを酸化ガス雰囲気中で行なうことにより、基板上に無機酸化物薄膜を形成することができる。前年度のBiーSrーCaーCuーO系でのBi_2Sr_3CaCu_2O_8とBi_2Sr_2CuO_6相のクラスタ-放出を利用した作りわけに引きつづき、さらに小さな原子・イオンにまで分解し基板上に推積させ無機薄膜を形成した。種々の酸化雰囲気中でBi_2Sr_2CuO_6薄膜の形成を試みた結果、NO_2>N_2O>O_2の順に効果的であることがわかった。NO_2中では10^<ー4>Torrという低圧でも充分酸化され、結晶化することがわかった。NO_2中では、50〜100℃低い基板温度でもBo_2Sr_2CuO_6は結晶化し、低温結晶化に有効であることがわかった。これは、レ-ザ-によって生成したOラジカルが有効に働いているためと考えられる。O_2とN_2Oを混合した雰囲気中では、成膜の低温化ができるだけでなく、薄膜中に充分の酸素がとりこまれることがわかった。O_2のみの雰囲気では膜表面にCuOなどの不純物粒子が析出し、モルフォロジ-を悪化させる。成膜中の基板励起(ArF:193nm)は低温結晶化に有効であり、X線回析パタ-ンの半値巾を狭くする。10mJ/cm^2程度の弱いエネルギ-の照射で充分なその効果があることがわかった。以上の様に、レ-ザ-アブレ-ション法は無機酸化物薄膜の形成に有効であること、又、雰囲気の選択により低圧、低温での薄膜形成が可能であることが明らかになった。
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